不動産投資は確定申告をすることによって、うまく節税することができます。
その代表的なものとして「減価償却」「法人化」があります。
しかし実際にはうまくいかない場合も多くあります。
今回は不動産投資の節税における減価償却や法人化のよくある失敗をご紹介したいと思います。
節税の失敗事例
不動産投資における減価償却や法人化の節税でよくある失敗は以下のようになります。
- 短期で物件を売却することによって減価償却の節税効果がなくなってしまう。
- 法人化したが個人の時より税金が増えてしまう。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
減価償却の失敗事例
不動産の減価償却費は経費として認められているので、
実際の所得を下げることができます。
減価償却費については「不動産投資をするなら知っておきたい!減価償却の仕組み」で詳しく解説していますので参考にしてください。
たとえば実際に得られた年間の家賃収入を100万円として、減価償却費が50万円だとすると、家賃収入から減価償却費を差し引いた残りの50万円が収入として課税されます。
つまり、減価償却費は所得税・住民税に対して節税効果があるのです。
しかし、減価償却での節税効果の恩恵を受けることができるのは投資期間中のみであることに注意です。
ずっと物件を保有しておく場合は別ですが、
不動産投資の出口戦略を考えた場合、当然物件の売却をすることになります。
物件を売却したことによって得られた利益(※損失があれば課せられません)に対して譲渡所得税というものがかかります。
譲渡所得税は物件の所有期間の長さで税率が変わります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
5年超 | 15% | 5% | 20% |
5年以下 | 30% | 9% | 39% |
5年を超えている場合は「長期譲渡所得」
5年を超えていない場合は「短期譲渡所得」といいます。
仮に所得税・住民税の実効税率を30%、物件売却時の減価償却費の累計を500万円とすると、
500万円 × 30% = 150万円
の節税効果があることになります。
しかし、物件売却時には譲渡所得税が課せられます。
長期譲渡所得:500万円 × 20% = 100万円
短期譲渡所得:500万円 × 39% = 195万円
この差し引きが実際の節税効果ということになります。
長期であれば、150万円 – 100万円 = 50万円
短期であれば、150万円 – 195万円 = -45万円
5年以下の短期の売却は逆に45万円分余計に税金がかかってしまうことになります。
つまり出口戦略を含めた不動産投資全体で見た場合
- 「所得税・住民税の税率」と「譲渡所得の税率」の差しか節税効果がない
- 短期譲渡の場合は譲渡所得税が大きくなり、むしろ損をしてしまう。
ということを知っておきましょう。
法人化の失敗事例
次に法人化の失敗事例を見ていきましょう。
法人として不動産投資を行うことで様々な費用を経費として計上することができ、節税効果が期待できます。
法人化については「不動産を経営するにあたって法人化するメリットってなに?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
しかし、法人化する際には注意するべき点があります。
- 法人では法人税や雇用保険・労災保険などの法人特有のコストがかかる。
- 不動産投資の規模(5棟10室)が大きくなると事業税が課せられますが、個人の場合は290万円まで控除を受けることができるのに対し、法人の場合は対象にならない。
法人化すれば必ず節税できるということではなく、場合によっては個人のほうが有利なときもあります。
個人と法人の税金には以下の違いがあります。
税金の種類 | 個人 | 法人 |
所得税 | 所得金額による累進課税 (別表:国税庁HP) |
なし |
法人税 | なし | 所得800万円以下:15% 所得800万円以上 :22.5% (資本金1億円以下) |
住民税 | 所得割:10% 均等割:一律4,000円 |
法人税割:法人税額の17.3% 均等割:70,000円 (資本金1000万以下) |
事業税 | 事業所得の5% | 所得400万円以下:3.4% 所得400万円~800万円:5.1% 所得800万円以上:6.7% |
※法人税・住民税・事業税については東京都の税率です。
では、課税所得による個人と法人の税額の違いを見ていきましょう。
課税所得300万円
税金の種類 | 個人 | 法人 |
所得税 | 202,500円 | なし |
法人税 | なし | 450,000円 |
住民税 | 304,000円 | 147,900円 |
事業税 | 37,500円 | 102,000円 |
合計 | 544,000円 | 699,900円 |
課税所得600万円
税金の種類 | 個人 | 法人 |
所得税 | 772,500円 | なし |
法人税 | なし | 900,000円 |
住民税 | 604,000円 | 225,700円 |
事業税 | 187,500円 | 238,000円 |
合計 | 1,564,000円 | 1,363,700円 |
このように課税所得の額によって個人と法人どちらがお得か変わってくるのです。
まとめ
今回は不動産投資における節税の代表的なものである「減価償却」「法人化」のよくある失敗をご紹介しました。 それぞれ注意しておくべきポイントをまとめておきます。
減価償却
- 5年以下の短期の売却は損をしてしまうことがある
- 「所得税・住民税の税率」と「譲渡所得の税率」の差しか節税効果がない
法人化
- なんでも経費算入できるわけではない
- 課税所得の金額によっては個人のほうが得である
不動産投資による節税もやり方によってはうまくいかない場合もありますので、失敗しないためにもしっかりと知識をつけて、賢く節税できるようになりましょう。