アパートやマンションを経営している方の中には経営が軌道に乗ってくると、
オーナー自ら不動産管理会社を設立して経営を法人化する方がいらっしゃいます。
法人化することによって税金面などで様々なメリットがあるためです。
この記事では、個人事業主としてではなく会社として不動産経営を行うメリットについて解説したいと思います。

法人化することのメリット

法人化とは?

個人の不動産オーナーが所有しているアパートやマンションなどの物件を
個人としてではなく、法人として経営していくことをいいます。

法人化の目安は?

不動産投資をする人すべてが法人化によって得をするとは限りません。
法人に切り替える目安としてよくいわれるのが、「年収2,000万円」です。

個人であれば年収が1800万円を超えてくると所得税が40%もかかるためです。

法人化のメリット

法人化のメリットはそのほとんどが税金に関してのことです。
法人化するメリットは色々ありますが、大きくは以下のようなものがあげられます。

  • 所得によっては法人税のほうが安くなる
  • 不動産所得を給与所得にできる
  • 税金を先送りできる
  • 損失の繰り越し期間が長い
  • 相続税・贈与税対策になる
  • 退職金を受け取ることができる

では、ひとつずつ見ていきましょう。

所得によっては法人税のほうが安くなる

日本の所得税は所得が多ければ多いほど税金が高くなる「累進課税制度」が採用されています。
個人で事業を行う場合、その売り上げに対して所得税がかかります。

平成27年以降は以下の税率がかかります。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え、330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え、695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え、900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え、1800万円以下 33% 1,536,000円
1800万円を超え、4000万円以下 40% 2,796,000円
4000万円超 45% 4,796,000円

年収1800万円を超えると所得税40%が適用され、
住民税もあわせると利益の半分を税金として納めなければなりません。
対して法人の場合、所得に法人税がかかります。


課税される所得金額 税率(平成28.4.1以後) 税率(平成30.4.1以後)
800万円以下の部分  19%(15%)  19%
800万円超の部分  23.4%  23.2%

※平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度については23.4%が適用されます。また、平成29年3月31日までの間に開始する事業年度については()内の税率が適用されます。

事業の規模が拡大し、所得が増えれば、
法人化を選択したほうが税率が少なくなることがわかると思います。

現在も景気対策の一環として、日本は法人税の減税傾向にありますので、
法人化するメリットはますます大きくなっていくでしょう。

不動産所得を給与所得にできる

法人の場合、不動産で得た利益を法人からの給与として個人で受け取ることができます。

法人にとっては給与として支払うので、損金(経費)として扱うことができ、
結果的に不動産所得は減ることになり、納税額が下がります。

また、自分以外の家族に従業員や役員として給与を支払う形にするなど所得を分散させることで、
さらに納税額を抑えることができます。

税金を先送りできる

役員や従業員のために生命保険に加入する場合、
そのほとんどが半分あるいは全額を損金として計上することができ、
法人税を圧縮することができます。

将来保険金が支払われたときは収入となってしまいますが、
後述する退職金を費用として計上したり、大規模な修繕を費用計上するなど、
計画的に費用を充てることにより目的に沿った使い方が可能です。

損失の繰り越し期間が長い

経営が赤字になっている場合、青色申告によってその赤字を繰り越すことができます。

「青色欠損金の繰越控除制度」といいます。

次の年以降の所得と相殺が可能になります。

不動産所得が赤字になり、他の所得と合算してもまだ赤字である場合、
個人であれば3年間までしか繰り越すことはできませんが、
法人であれば3倍の9年間まで繰り越すことができます。

たとえば、その年の課税所得が1000万円で、
それ以前の9年間が毎年100万円の赤字であった場合は

個人 : 1,000万円 – 300万円(3年間の赤字) = 700万円

法人 : 1,000万円 – 900万円(9年間の赤字) = 100万円

個人であれば残った700万円に税金がかかりますが、
法人であれば100万円にしか税金がかかりません。

相続税・贈与税対策になる

相続税や贈与税対策としても有効です。

相続時や贈与時には物件の所有権を移転することになりますが、資金もかかり大変です。
しかし株式であれば、移転も簡単で、小口化することで毎年の贈与も可能になります。

退職金を受け取る事ができる

法人では代表取締役や家族役員へ退職金を支払う事が可能で、
その全額を損金として計上することができます。

退職金の課税額の計算方法は以下になります。

退職金の課税額 = (退職金 – 退職金控除額) ÷ 2

※退職金控除額

勤続年数 退職所得控除額
20年以下

40万円 ×  勤続年数

(80万円以下の場合は80万円)

20年超

800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20)

退職金は、他の所得と別で課税される「分離課税」であり、税負担の軽減が図られています。

勤続年数が40年で退職金が3,000万円の場合は、

退職金控除額 = 800万円 + 70万円 × (40 – 20) = 2,200万円

課税額 = (3,000万円 – 2,200万円) ÷ 2 = 400万円

となり、退職金として受け取った3,000万円も400万円に対してしか所得税がかからず、
所得税を大幅に節約することができます。
(ちなみにこの場合は約2,921万円が手取り額として残ります。)

まとめ

今回は法人化のメリットについて書かせていただきました。
このように個人であれば多く支払うことになる税金も、
法人化することによってお金を節税しながら個人に移転することができます。
法人化には設立費用もかかりますが、利益を圧縮する仕組みがたくさんあります。
これから事業を拡大していこうという方は、
法人化することによって節税の効果は大いにありますので、
ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。