購入した物件を賃貸に出して経営していく場合は、基本的に「住居の貸付」にあたりますので、原則として消費税は非課税となります。
しかし不動産経営が軌道に乗り、事業的な規模になってくると消費税についても考えなくてはならない場合もあります。
賃貸経営と消費税について知り、余計な税金を払わないようにうまく節税しましょう。
賃貸経営と消費税
不動産投資では基本的に購入した物件を貸し出して、家賃収入を得ていくという方法になります。
住居を賃貸するにあたっては消費税は非課税となるので、煩雑な消費税の計算は必要ありません。
「家賃」「共益費」「礼金」色々と名目はありますが、それぞれの扱いは以下になります。
家賃 | 住居用途であれば非課税 |
共益費 | 家賃に付随するものとして非課税 |
礼金・保証金など | 返還しないものについては非課税 |
駐車場代 | 契約形態によって非課税 |
注意したいのが物件の使用用途と駐車場代。
注意すべき点を以下にまとめてみました。
- 店舗や事務所、貸し倉庫などの住居としてではない貸付は消費税の課税対象になります。
- 住宅と併用する場合は、家賃のうちの住宅家賃の部分を合理的に区分して、その部分の金額は非課税になります。
- そのほかに食事付きの下宿などは、住宅の家賃部分と食事部分の金額を区分し、食事部分が課税対象になります。
- 駐車場を家賃込みで自由に使用できる場合は駐車場を含めて「住居の貸付」として扱うことになり、非課税になります。
- 建物の賃貸借契約とは別で駐車場の使用契約がされている場合は、駐車場は「住居の貸付」とは別物扱いになり、消費税の課税対象になります。
簡易課税制度
前々年または前々年度の課税売上が1,000万円を超えると、消費税課税事業者として消費税を納めなければならなくなります。
1つ1つの事業単体ではなく、合算して1,000万円を超える課税売上高です。
住居の賃貸による収入は課税売上にあたらないので、注意してください。
賃貸住宅とは別の契約形態である駐車場の賃貸だけでは1,000万円以下であっても、販売収入など他に事業収入がある方は、これらの収入と不動産の収入を合算して判断されるので税金の対象になります。
消費税の計算方法
消費税の計算方法は以下になります。
【 課税売上(税抜)× 8%(税率)】- 【 課税仕入(税抜)× 8%(税率)】
= 納付税額
家賃収入を得るためには固定資産税やローンに対する支払い利息、水道光熱費などさまざまな経費がかかりますが、課税対象となっているものしか仕入れ額として売上から差し引くことができません。
ですので、賃貸経営の場合は差し引ける金額が少ないということになります。
しかし、前々年または前々年度の課税売上高が5,000万円以下であれば、 届出をすることで「簡易課税制度」の適用を受けることができます。 簡易課税制度を利用すれば、実際の仕入れ等の税額を一定の割合とすることができる「みなし仕入率」で計算することができます。
※みなし仕入率
第一種事業(卸売業) | 90% |
第二種事業(小売業) | 80% |
第三種事業(製造業等) | 70% |
第四種事業(その他の事業) | 60% |
第五種事業(サービス業等) | 50% |
第六種事業(不動産業) | 40% |
簡易課税制度を適用した場合としなかった場合を比較
事業内容 | 不動産賃貸業のみ |
課税売上 | 1,000万円 (住居以外の賃貸収入) |
経費(課税対象分) | 300万円 (修繕費・管理費など) |
簡易課税制度なし
( 1,000万円 × 8% )-( 300万円 × 8% )= 56万円
簡易課税制度あり
1,000万円 × 40% × 8% = 32万円
不動産業の場合は一般的には経費が少ないので、みなし仕入れ率も低く、簡易課税での計算が有利になりやすいです。
しかし、あくまで課税売上高だけをもとに計算している簡易な方法ですので、場合によっては不利になるケースもあります。
管理手数料や水道光熱費のみの場合であれば、それほど節税効果があるような支出にはなりませんが、修繕費については鍵の交換などの小規模なものから外壁塗装などの大規模なものまでさまざまな修繕があります。
1年間のなかで小規模な修繕を多数回行ったり、大規模な修繕を行ったりすれば、おのずとその年に支出したか全体の経費は多額になります。
事業内容 | 不動産賃貸業のみ |
課税売上 | 1,000万円 (住居以外の賃貸収入) |
経費(課税対象分) |
650万円 (内訳) 管理費:180万円 修繕費:470万円 |
簡易課税制度なし
( 1,000万円 × 8% )-( 650万円 × 8% )= 28万円
簡易課税制度あり
1,000万円 × 40% × 8% = 32万円
このように、修繕費が多くかかった場合などは簡易課税を選択しない通常課税の方が良いケースがあります。
簡易課税制度を適用しない場合は翌事業年度開始の日の前日までに届出が必要なので、2~3年先にかかると思われる経費をあらかじめ把握しておき、うまく使い分けるようにしましょう。
消費税の還付
課税仕入れの消費税額が課税売上の消費税額を上回った場合、払いすぎた消費税は還付されます。
この場合、簡易課税制度を選択していない課税事業者(課税売上高1000万円超)であることが条件となります。
よくある代表的なものとして例えば、
同じ年に課税事業者が非住居用の商業ビルを1億円(税別)で購入。
家賃などの収入が600万円(税別)あった場合
収入にかかる消費税:600万円 × 8% = 48万円
経費にかかる消費税:
納税額 = 30万円 – 800万円 = -770万円
商業用の賃貸収入はすべて課税売上なので、この年は770万円もの消費税が還付されることになるのです。
まとめ
賃貸経営と消費税について書きました。
賃貸経営ではマンションやアパートなどの住居として賃貸だけではなく、店舗や倉庫など非住居を貸すという方法もあります。
個人ではなかなかないケースかもしれませんが、もし不動産投資が順調で事業としての規模も大きくなり、非住居の賃貸経営も考えるのであれば、消費税についても節税できるようにしっかりと勉強しておきましょう。